東京高等裁判所 昭和35年(ラ)4号 決定
別紙目録一の物件についての相手方の異議の理由は、該物件は、本件仮処分決定に表示の「シルバーユニツト」の頭部小型殺菌室の部分(本件仮処分決定添付第二図表示赤線で囲む部分)の製品(完成品)に該当しないのに、これに該当するものとして執行した本件仮処分の執行は違法であるというのであり、右物件が、右製品に該当しない理由として、仮処分決定に表示の物件は「扉を備えた器具類収容戸棚の内に紫外線殺菌灯と電線とを接続する電気回路中に殺菌灯と螢光灯との回路を交互に切換える自動開閉装置を設け、之を扉が圧着する戸棚の縁枠適所に装置した紫外線殺菌装置の構造」を備えたものであるのに、別紙目録一の物件は、「開閉蓋の扉を開閉しても直ちに螢光灯が点灯せず、ユニツトの胴体の横に在る手動型スイツチ(ビユーラ用螢光灯スイツチ)を手動して螢光灯を点滅するようにしたもの」であつて、仮処分決定表示の物件とは異る物件であると主張するものである。
これに対して、抗告人の主張は、やゝ明確を欠く点はあるが、相手方が主張する別紙目録一の物件の構造は、相手方において、不法にも、本件仮処分執行後に、加工改装したもので、仮処分執行当時は、前記の「殺菌灯と螢光灯との点滅を自動的に切換える装置」のものであつたのであるから、本件仮処分執行には、相手方主張のような違法はないというに在る。
ところが、記録によれば、本件仮処分決定中、別紙目録一の物件すなわち、「シルバーユニツト」に関する部分の主文は、「一、債務者は、別紙第二目録及び図面表示の構造を有する、呼称「シルバーユニツト」の頭部小型殺菌室の部分(同図面赤線で囲む部分)を製作販売または拡布してはならない。二、債務者の右物件の製品もしくは半製品に対する占有を解いて債権者の委任する東京地方裁判所執行吏にその保管を命ずる。」というのであり、その仮処分決定の本文はもちろん、その第二目録及び添付図面のどこを見ても、仮処分の対象たる物件の要件として、前記の「殺菌灯と螢光灯との点灯を自動的に切換える装置」を有すべきことは、記載されていない。すなわち、右添付図面によれば、シルバーユニツトは、扉((2))螢光灯((3))、殺菌灯((4))自動開閉器((7))配線コード((13))等を装置してあることはこれを理解し得るが、その螢光灯と殺菌灯とが自動的に切換点滅するものであることを理解せしめるに足る図面上の表示も、辞句による説明もなされていないのである。そうだとすれば、本件仮処分決定は、それを表示された通りに解する限り、仮処分の対象たる物件は、右に「螢光灯と殺菌灯とを自動的に切換える装置」を有することを要件としているものであると解することはできないわけである。
そして、別紙目録一の物件が「シルバーユニツト」と呼称される物件であることは記録上明かで、しかも、右「螢光灯と殺菌灯とを自動的に切換える装置」以外の点で、仮処分決定表示の物件と相違することは、これを認めるべき証拠もないのであるから、別紙目録一の物件に対する本件仮処分の執行が違法であるとはいわれない。
尤も、記録によれば、抗告人の本件仮処分申請の趣旨としては、相手方の製造販売する「シルバーユニツト」は、抗告人の実用新案権の権利範囲に属する、前記「螢光灯と殺菌灯とを自動的に切換える装置」を備えているものであるとし、それの製造、販売または拡布を禁止し、製品を執行吏の保管に移すことを目的としたもので、本件仮処分決定は、右申請を容れたものであるから、仮処分決定においても、目的物件の表示に当つて、右の特別な装置の点を明確にすべきであつたのに、この点の表示を欠いた結果、仮処分決定は、抗告人の申請したよりも広い範囲の物件について、仮処分を許したという結果となつているものであることが認められる。しかし、仮処分決定のこの点の瑕疵の補正は、別個の手続によるべきものであつて、この瑕疵に基因する仮処分決定執行の結果の不当を、執行方法に関する異議の理由とすることは許されない。
そうだとすれば、別紙目録一の物件についての、相手方の本件異議は理由がないもので、これを認容した原決定は失当である。
(内田 鈴木 入山)